精神疾患について考察するブログ

自分が患っている精神疾患を中心に、それらの疾患や患者とどうやって向き合っていけば良いかを考察します

双極性障害II型の診断の難しさについて

筆者はこのブログを執筆時点で、「適応障害」、「双極性障害II型」、「パーソナリティ障害」の3つの疾患を併発していると「はじめに」でも述べました。 

筆者は現在、とある理由で2つの別々の精神科に通っています。1つは近所の精神科で、こちらが基本的に主治医で、かれこれ3年ほど通院を続けており、薬の処方をしてもらっています。 

もう1つの精神科はセカンドオピニオンを聞きに行くために伺ったのですが、そちらの病院では「薬に頼らない治療」をコンセプトとしており、投薬を最低限に抑え、それ以外の多種多様な方法を最大限活用して、各種精神疾患の症状を抑えるという治療をメインにしており、それらの中でいくつか試してみたいものがあったために、2つ並行して通院しているという状態です。 

2つの病院に通院していることや、「薬に頼らない治療」などの情報は今回のブログの主題から外れていますので、詳細は別の機会があれば書きたいと思います。 

今回主張したいことは、 

主治医とセカンドオピニオンをいただいた医者との間で症状の見解や治療方針が異なっており、それらをすり合わせた結果、初めて正しいと思える診断結果が得られた 

という事実です。 

主治医とセカンドオピニオンをいただいた医者との間で症状の見解や治療方針が異なっており、それらをすり合わせた結果、初めて正しいと思える診断結果が得られた 

主治医にはかれこれ3年以上お世話になっていますが、初診から今年(2018年)の5月にセカンドオピニオンをいただくまでの間、私の病名は「適応障害」ということになっており、「双極性障害II型の疑いあり」が但し書きで付いているという状態が続きました。 

適応障害」については、下記のリンクで公表されている通り皇太子妃雅子様が罹患しているご病気ということで、ご存知の方も多いのではないかと思います。 

皇太子妃雅子様のご病気について

公表事項 - 宮内庁

 詳細については、はてなキーワードでも参照できるため割愛しますが、ざっくり説明してしまうと「適応障害」とは以下のような特徴を持つ病気です。 

  • 外部からのストレスが原因で発症する
  • 症状としては抑うつ状態、不安感、意欲や集中力の低下、イライラ、頭痛、めまい、動悸、倦怠感などが挙げられる
  • 無断欠席や無謀な運転、喧嘩、物を壊すなどの社会的に問題のある行動を起こすこともある
  • ストレスとなる状況や出来事がはっきりしているので、その原因から離れると、症状は次第に改善する(重要) 

外部のストレスに耐えられなくなって発症するため、原因のストレスから離れれば症状は比較的短期間で改善するというのがこの病気の特徴です。

 皇太子妃雅子様の例で言えば、宮内庁内部での確執が原因で発症したともいわれていますので、宮内庁から離れてしまえば回復してしまうはずですが、立場上そのようなことは簡単にできないため、長期間苦しんでおられるのだと推測できます。 

皇太子妃雅子様の例はさすがに特殊すぎるため筆者の話題に戻りますが、筆者の場合は6年ほど前に仕事中のストレス(過労、人間関係)が原因で発病しました。 

それでも最初の3年間は有休を多めに取ったり、栄養ドリンクを大量に服用したりなどで騙し騙しやってきたのですが、それも限界に達し、後半の3年間は調子を大きく崩す度に3か月や6か月という期間、会社を休職して療養に努めてきました。 

また、復職時は4時間半や6時間半といった時短勤務に加え、業務の内容も復帰前と比べてはるかに軽く、また多くの人との関りが必要ないものをあてがっていただくなど、会社には最大限の配慮をしていただきました。(特に、一番人間関係でトラブルが多発していた人は異動となり、既に関わり合いがなくなっていました) 

しかし、それでも症状はなかなかよくなりません。1年などというかなり長い期間をかけてようやく健康な頃の50~60%くらいまで回復してきたかなと思うと、健康な頃には何でもなかったような些細なトラブルですぐに調子がどん底に落ちてしまう、ということを繰り返しています。 

これは明らかに適応障害」ではないと思いました。発症した頃の過度なストレスには全く晒されていないからです。「適応障害」の側面もあるにしても、これだけ長く苦しみが続く原因は「適応障害」だけではないはずだ、という結論に筆者自信が至ったのです。 

その一方で、「双極性障害II型」であるという確証も持てませんでした。「双極性障害」とは、一昔前までは「躁うつ病」と呼ばれていた病気で、躁状態うつ状態を繰り返すことが特徴です。 

躁状態と聞くと、「躁(そう)」という響きから、なんだか気分が爽快な状態なのではないか、と思う方もいらっしゃるかも知れませんが(恥ずかしながら筆者がそうでした)、実際は躁というのは「せかせかとさわがしい。あわただしい。さわぎまわる。さわぐ。」という意味です。要するに落ち着きがなくなります。 

双極性障害」にはI型とII型が存在し、I型の場合、躁状態になると入院が必要になるくらい行動がおかしくなります。夜中に突然家を出て行ったり、やはり夜中に友人に電話をかけまくったり、中には若い女性の患者さんが病室内を裸で飛び回ったりするケースもあるそうです。こういった極端な躁状態になるのがI型の特徴です。I型であれば明らかに異常であるため、病院に行くことが多く、そしてそこでI型の診断を貰うことが多いようです。 

それに対して、II型は入院を要するほどの極端な躁状態になることがありません。であれば問題ないのでは?と思われるかもしれませんが、実際はそれほど簡単な話ではありません。I型ほど躁状態が極端でないため、躁状態で病院に行くということがほとんどありません。しかし、II型の躁状態でも、明らかに周りから見て異様な行動をとり始めます。筆者も体験した代表的な症状の例を挙げると 

  • 自尊心の肥大:なんでもできるような気持ちになる。また、次から次へと画期的なアイデアが生まれてきて、それを実践しようとしてしまう
  • 社交性の増加:急に他人との交流が多くなる
  • 浪費:不要なものに大金を使ってしまう
  • 睡眠時間の減少:睡眠をとらなくても疲れを感じない
  • 注意力散漫:集中力が続かず、何もかもが中途半端になる。また、些細な刺激でイライラするようになる 

などがあります。突然会社を辞めて起業してみようと思い立ち、計画を練ったり難関資格を取り始めました。起業には人脈が必要だと思い、卒業以来会っていなかった高校や大学の友人や、会社の同僚と遊びに行ったり飲みに行ったりすることが極端に増えました。上司や取引先に理不尽なことを言われたときに、カッとなって暴言を吐いてしまうこともありました。余りにイライラしたときには、帰りの車の中で音楽を大爆音で鳴らしながら、街の一般道で100km/hも出して走行してしまったこともあります。ソーシャルゲームのガチャに数百万円を費やしたり、深夜2時に寝たのに4時前にはもう目が覚めてしまって(しかも全く眠くない)、出社するまでの数時間を資格の勉強にあてたりしました。 

ただし、これらの体験は体調を崩し始めた6年ほど前の1年間のみに見られた症状で、それ以降はこのような極端な状態には一度もなっておらず、それが筆者自身が「双極性障害II型」であるという確証が持てない原因となっていました。 

そのため、別の精神科医セカンドオピニオンを求めることにしました。セカンドオピニオンでも初診の時は「適応障害」という診断結果であり、「うつ」や「双極性障害II型」の可能性は低いだろう、という見解でした。 

しかしその後、前述した「薬に頼らない治療法」を受けるためにセカンドオピニオンをいただいた病院に何度か通院し、診察を受けているうちに『「双極性障害II型」の可能性はやはり捨てきれない』と、セカンドオピニオンの見解が変わりました。 

そして、筆者が現時点で服用している薬の種類について質問され、それに回答したところ、『仮に筆者が「双極性障害II型」だとしたら、私ならばこのよう薬を処方する』というコメントをいただけたのです。 

筆者はすぐに主治医にそのコメントを見せ、「セカンドオピニオンでこのようなコメントを貰いましたが、先生はどのようにお考えですか?セカンドオピニオンの方が間違っていると思いますか?」と質問しました。もし、主治医がコメントを突っぱねて自分の診断の正当性だけを主張するようなら、セカンドオピニオンをいただいた病院への転院も辞さないつもりでした。 

しかし、その時点で初めて主治医から以下のような見解をいただいたのです。

 

双極性障害II型である可能性は非常に高いでしょう。また、それに加えてパーソナリティ障害も併発していると考えています。双極性障害II型とパーソナリティ障害によって日常の些細なことが過大なストレスとなり、それが原因で会社や家族と不適合を起こし、その結果適応障害になっていると考えています。』

 

主治医の病院に通い始めてから3年間、何度問いただしても筆者の病名は「適応障害」であり、「双極性障害II型」はあくまで「疑いあり」という診断しかもらえていませんでしたので、この新たな見解で、私は脳みそが揺さぶられるほどの衝撃を受けました。 

これまでの3年間「適応障害」として取り組んできた治療法は、意味がなかったとまでは言いませんが、問題の根本にアプローチするものではなかったということになるからです。 

最初から「双極性障害II型」(およびパーソナリティ障害)として治療をしていれば、もしかしたら何度も復職と休職を繰り返すという、無駄な3年間を過ごさず、今頃は日常生活に支障がないくらい回復していたかも知れないのです。 

ただし、主治医の名誉のために弁解するわけではありませんが、逆に筆者は今の時点で「双極性障害II型」と診断されたことは、ある意味ではラッキーでもあったとも考えています。 

なぜなら「双極性障害II型」は、正式に診断されるまでには平均で約10年(※1)ほどかかるといわれているほど、診断が難しい病気だからです。したがって筆者の「約6年」というケースは、平均から考えれば早い方だと言えます。 

※1:この年数については書籍やインターネットなどソースによって数値がまちまちであり、正確な値がわかりません。この事実も「双極性障害II型」と正式に診断することがどれほど難しいかを物語っているかと思います。筆者は『双極性障がい(躁うつ病)と共に生きる』(加藤伸輔)という本に記載されている「9.7年」を参考にさせていただきました。 


 

 筆者のケースでは、セカンドオピニオンを活用することで早めに「双極性障害II型」の診断結果を得ることができました。筆者のように、主治医の言うことをきちんと聞いて、薬も服用しているのに一向に良くならないという方は、一度セカンドオピニオンを活用してみてはいかがでしょうか。 

自分が想定している病名で診断してくれる医者が見つかるまで転院を繰り返す、という方法も考えられなくはありませんが、1つの病院で長期にわたって調子の波を記録してもらえるということは、1つのメリットであると筆者は考えます。また、自分が想定している病名が正しいとは限りません(精神科医ですら、同じ患者を診察しても診断が異なってしまうのですから)ので、転院を繰り返しても期待通りの治療が受けられる保証はありません。 

やみくもに転院するよりは、筆者のようにセカンドオピニオンを活用してみて、医者同士の意見をすり合わせて見て、それでも納得がいかないようだったら、初めて転院を考えてみてもよいのではないでしょうか? 

余談ですが、上記で紹介した書籍の著者である加藤伸輔さんも、自身が「双極性障害II型」であるという確信をもっておられたのに、主治医が聞き入れてくれなかったため、双極性障害委員会の委員を務められている先生を調べ、その先生が勤務している病院に転院する、という方法を取られたようです。 

このような方法も有用だと思います。ただし、加藤伸輔さんのように100%上手くいくとは限らないため、その点は留意する必要があるでしょう。