精神疾患について考察するブログ

自分が患っている精神疾患を中心に、それらの疾患や患者とどうやって向き合っていけば良いかを考察します

理解されないうつ

今回はどちらかというとうつ病患者というより、その関係者の方をターゲットにしたブログとなります。少し昔の話ですが、7/9(月)にYahoo!Japanニュースで配信された記事を紹介します。

 

news.yahoo.co.jp

 

息子をうつで亡くした母が、労災を申請するも不認定となり、行政訴訟に踏み切って労災を認定させたという話です。

 

この記事の中に、うつで苦しんだ息子さんがブログに綴ったという文章が引用されていますが、この内容に非常に共感が持てたため、このブログでも取り上げたいと思いました。

 

〈日本人ってなんでこんなに働くのでしょうかね。わかりきってたことですが、鬱の原因は確実にお仕事ですね。何も手につかない。何もする気がしない。ただひたすら焦燥感や倦怠感、嫌悪感を薬で抑えるだけ。薬の効き目もどんどんなくなってる感じがする。困った。これからどうしよう。〉 

 

〈自分には存在価値がない。これがどれほど痛いことなのか。これから先それと仲良く生きていける自信が全くありません。生きてるんじゃなくて死んでないだけ。何のために生きてるんですか?「死」ではなく「生きているのが無理」という闇が心を支配します。はっきり言ってその感覚が怖くて怖くて仕方がないのです。これから先が何も見えません。4年間も何をしてたんだろう。死にはしませんが。さすがに仲良く優しくしてくれた人に失礼なので。もし一人なら簡単に死んでしまいそうです。〉 

 

〈今の仕事どう考えても一人じゃ辛いんですよね。自分はだめだ。何もない。生きてる価値が見つからない。答えはいつまでたっても見つからない。死ぬ根性もなく、消えてなくなりたいと思えど何も行動をおこせず、もう自分の手に負えないってことがわかった気がする。今の状態が本当に本当に嫌になった時、俺は死を選ぶと思う。〉 

 

うつ病やその他の精神疾患における「抑うつ状態」による苦悩が、この3つの文章に集約されていると感じました。

 

記事のタイトルにも本文中にも「本当のしんどさが分かっていたら」という、母の後悔が随所に記されていますが、実際に上記3つの引用文を読んで、心にグサッと刺さった感覚になれた方はどれくらいいらっしゃるでしょうか。ああ、これがまさにうつ病そのものなんだと理解できた方は何人いらっしゃるでしょうか?恐らく、実際にうつを経験したことがない方の中には、そういう方は残念ながらいらっしゃらないと思います。

 

少し話がそれてしまいますが、筆者のアトピー性皮膚炎の例で考えてみます。

 

筆者は、子供の頃から皮膚が弱く、冬場になるとすぐにあかぎれになったり、ギターを弾いてせっかく指先にできた皮膚の硬い部分がすぐに剥けてしまったりということはありましたが、湿疹やアトピー性皮膚炎とは無縁でした。

 

ですので、アトピー性皮膚炎の人の話を聞いても「ああ、ものすごく皮膚が痒いんだ」という程度の認識しか持っていませんでした。

 

しかし社会人になって3年ほどが経過した頃に一度、かなりひどい皮膚炎を経験しました。額などの薄い皮膚部分が全身に渡って真っ赤にただれ、酷い高熱を帯びていました。そして何よりも、その痒さは「痒い」なんてレベルではありません。蚊に刺されたときの痒さくらいしか体験したことがない筆者にとって、それはもはや「痒い」とは別次元の身体感覚でした。とにかくその部分の皮膚を全部剥ぎ取ってでもいいから治まって欲しい、それくらいの痒みだったのです。

 

当然、患部を掻き壊してしまいます。そうすると、そこから松脂のような気色悪く粘着質な液体がダラダラと垂れてくるのです。それで痒みが治まってくれれば良いのですが、残念ながら強烈な痒みは全く治まらず、しかも掻き壊してしまったために今度は痛みまで伴うようになります。

 

夜になると更に痒みが強まり、痒みで目が覚めるため熟睡できません。そして夜中に患部を掻き壊してしまうため、朝起きると寝具に血やら何やらといった体液が付着していることはザラでした。

 

結局何日か後に皮膚科に行き、ステロイド軟こうを塗り続けて半年くらいでこの劇的な症状はなんとか治まり、現在ではたまにちょっと痒くなるという「慢性湿疹」というレベルに落ち着いています。

 

実際のところ、アトピー性皮膚炎は半年以上症状が続く場合に「慢性」と診断されて病名が確定するため、半年で治まった筆者の場合は厳密にはアトピー性皮膚炎とは言えないのでしょう。

 

しかし、会社の同僚に「誰かと殴り合いでもしたのか?」と言われるほど顔中がひどくただれたあの症状のピークの頃は、間違いなく慢性のアトピー性皮膚炎の患者の方と同レベルの症状が出ていたと思います。

 

その時初めて、「ああ、アトピー性皮膚炎ってこんなに辛いんだ。ただ皮膚が赤くて痒いだけだって思ってたけど、『もうこんな皮膚なんていらない!剥ぎ取りたい!』って思うほど、夜も眠れなくなるほど、こんな別次元の痒みが出るなんて知らなかった」と実感したのです。

 

話を戻しますが、うつも結局同じ話なんだと自分は思っています。言葉や文章でいくら辛さを伝えても、うつになったことのない方にはその真の辛さは伝わらないのだと思っています。今回紹介した記事の中で母が「本当のしんどさが分かっていたら」と何度も自責の念に駆られていることが綴られていますが、それができないからこういった不幸な事件が起こってしまうのでしょう。

 

ですので、身近な方がうつになってしまったいう方についてはまず、「自分は、自分が実際に体験していない限り、この病気のことを真には理解できないんだ」ということを、常に念頭に置いていただきたいと思っています。

 

決して「~した方がいいのでは?」など、自分の価値観や物差しに基づいた発言をしないことです。ましてや「そんな病気なんか大したことない」、「そんなのは甘えだ」などという発言は、絶対にしてはいけません。よく、うつの人に「がんばれ」と言うのは禁句だということを耳にしますが、これも同じ理屈からうつの患者にとって辛いのです。

 

うつの辛さは、患者本人にしかわかりません。その辛さも知らない人が、あれこれと自分の意見や価値観を押し付けたり、頑張れないのに「頑張れ」などと励まされることは、うつ患者にとって毒にしかならないのです。

 

逆説的に、うつ患者自身も「自分の辛さはうつになったことのない人には真に理解してもらえない」ということを、どこか頭の片隅に置いておく方がよいように感じます。そうすることで、周りの人の何気ない一言や、心配からくる(大体の場合余計な)アドバイスに対して、深く傷つかなくて済みます。

 

ただし、あまりにこの信念が強すぎると、今度は人を頼ることができなくなってしまいます。うつは一人で治すのは難しい病気です。何か腹の立つことを言われたときだけ都合よくこの考えを思い出し、それ以外の特にトラブルでない場合は、人に上手く頼る方法を見つけるのが、治療への第一歩になる気がしています。