精神疾患について考察するブログ

自分が患っている精神疾患を中心に、それらの疾患や患者とどうやって向き合っていけば良いかを考察します

「体調の波」ってどんな形?

うつのような気分障害では、よく体調や気分といった体調に「波がある」という表現をします。双極性障害はかつて躁うつ病と呼ばれていた通り、躁状態うつ状態を繰り返す病気のため、特にこの「体調の波」に苦しむことになります。

 

ところで話は変わりますが、あなたは「波」と聞いてどのような形状をイメージしましたか?海岸に押し寄せる波でしょうか?もし理数系が得意な方なら、三角関数サインカーブのようによりリズムが一定で規則正しい波を思い描いたかも知れませんね。

 

私もそうですが、普通「波」と聞いたら、大体このような曲線で構成されたイメージを思い浮かべるのではないでしょうか?曲線で構成されているということは、波の高さが変わるときには必ず「上がり始め」もしくは「下がり始め」が存在することになります。

 

この前提条件に基づいて「体調の波」という表現について考えると、波は滑らかな曲線で構成されていますから、ある日調子が悪くなるにしても、悪くなる直前には調子が上げ止まって下がる瞬間が必ず存在するということになります。この場合、調子が変化する近辺では曲線の傾きが極端に変わるため『そろそろ体調が上り調子になりそうだ』とか、逆に『そろそろ体調が下り坂に差し掛かりそうだ』とか気付けそうなものです。

 

しかし残念ながら、私の体感ではそのような調子の変換点に気付けたことの方が圧倒的に少ないです。特に調子が良い状態から悪い状態になるときには、大抵の場合突然です。調子が数週間~数か月安定していたのに、ある日突然ガクッとどん底に落ちてしまいます。明日は調子が悪くなりそうだとか、数時間後に調子が悪くなりそうだとか、そんな兆候を感じられることはほとんどありません。調子が悪くなる時は突然来るのです。

 

この事実から、私は「体調の波」をより実態に即した表現にするならば、「体調の株価チャート」の方がしっくりくるのではないかと思っています。

 

「体調の株価チャート」

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これは本ブログ執筆時点での過去6か月(2018/1/15~2018/7/13)分の日経平均株価の値動きを表したチャートです。このようなチャートの事をローソク足チャートと呼びますが、ここは投資について指南するブロクではありませんので、ローソク足チャートの詳細な説明は割愛します。今はただ単純に『規則性のない波だなあ』と思いながら見ていただければ十分です。

 

例えば1月中旬頃には24,000円だった株価が、2月頃に21,000円まで急落していますね。この頃はブログ執筆時点のようにトランプ大統領が中国に対して貿易戦争を仕掛けることを宣言していたわけではありません。強いて言えばこの頃は『アメリカは北朝鮮に対して戦争を仕掛ける気ではないか?』という懸念があったくらいですが、株価が急落した頃にその懸念がより強くなるような特別な出来事があったわけでもありません。さして明らかな理由もないのに株価が下落したのです。

 

その後の値動きも微妙ですよね。3月中旬までは底辺付近で上がったり下がったりを繰り返し、4月から5月にかけてようやく回復傾向になりましたが、6月に入ってまた値動きが不安定になりました(これは前述したトランプ大統領の貿易戦争が原因です)。

 

精神疾患のブログで何を延々と株式の話をしているんだとそろそろお叱りを受けそうですが、この株価チャートの形って筆者が調子を崩すときの典型的な「体調の波」とそっくりなのです。重要なのは

 

  • 波の形状に規則性がない(どこで上がるかまたは下がるか予測しにくい)
  • 波の形状に連続性がない(ある日突然急騰したり暴落したりする)
  • 一度暴落するとしばらく波が安定しない
  • 回復するときも順調な右肩上がりになることはなく、途中で上下を繰り返し、しかも元の値に戻るまでに相当の時間を要する

 

という点です。気分障害をお持ちの方は何となく実感として理解していただけるのではないかと思います。もし気分障害をお持ちではない方についても、『ああ、体調の波って不規則でしかも予測しにくいんだ』と認識していただけるだけでも、気分障害の患者の方と接するときに、だいぶ違う心持ちで接していただくことができるようになるのではないでしょうか?そういった期待を込めて、このブログを執筆しています。

 

「体調の株価チャート」の今後を予測し、対処する

とはいえ、『「体調の波」は株価チャートみたいなもので将来が予測できません。はい、終わり。』というのも困りますよね。

 

筆者が闘病するにあたってよく参考にしている書籍である「双極性障がい(躁うつ病)と共に生きる」の執筆者である加藤伸輔さんという方は一日に3回、その時の調子を「-5~+5」で記録するようにしているそうです。

 

 

-5は酷いうつ状態、+5は酷い躁状態だそうですが、そこに至るまでの間に±3くらいを記録してしまった場合、何らかの対策(頓服薬を飲む、うつ/躁の時に陥りがちな行動と逆に行動をとるなど)を施すようにして調子を保っているということです。他にも自分に起こったわずかな変化(イライラ、言葉遣い、入浴したくなくなる、など)を調子の変換点だと認識することで、調子の急騰または暴落がある程度防げるようになるようです。

 

また、先日のブログで紹介した双極性障害ナレッジベースサイト「BIPOGRAPHY」にも予防策がいくつか記載されていますので、双極性障害の方は参考になる情報があるかも知れません。

 

bipography.com

 

筆者はまだどの身体的変化がどういった調子の変化に繋がるか、というところまでは分析しきれていないのが現状ですが、例えば「なぜか特に理由もないのにイライラしているな」と気づいたときには、少なくとも状態が悪くなっていることが明らかなため、散歩に出かける、カラオケに行く、昼寝をするなど、考えうる対処を矢継ぎ早に打つようにしています。

 

こういった自分に生じた問題を解決するために取る行動を、認知行動療法では「コーピング」と呼びます。調子を安定させるためには「どれだけ多くのコーピングのレパートリーを持っているか(質より量)」が重要なのだそうです。

 

筆者の例で言えば、まず散歩してみて、それでもイライラが治まらなければカラオケに行ってみて、それでもダメなら昼寝してしまうという感じで、問題を解消することができる適切なコーピングを見つけるまでいろいろと試すことができるからです。そして昼寝してもダメならこれはもう自分の手には負えないということで、通院するかカウンセラーに相談するということになります。

 

ちなみに認知行動療法的にはリストカット、過剰服薬(オーバードース)、自殺などもコーピングにあたります。苦しい現状を変えるために行う行為という意味では散歩やカラオケと変わらないからです。ただし、その代償として怪我、入院、最悪死という結果を招くことになり、当然良いコーピングとはみなされていません。

 

コーピングレパートリーに乏しいと、自身に生じた問題に対処する術がないため、こういった極端なコーピングに走りやすいということです。そのためにも、とにかくたくさんのコーピングレパートリーを持つことが精神安定のために重要なのです。