精神疾患について考察するブログ

自分が患っている精神疾患を中心に、それらの疾患や患者とどうやって向き合っていけば良いかを考察します

医者とカウンセラー

精神疾患を抱えてから、最初に通院した病院の先生が非常に信頼できる人で、ずっと通い続けている方って、一体どれくらいいらっしゃるのでしょうか?もしいらっしゃったとしたら、その方は幸運だと思います。

なぜかというと、いろいろな精神疾患関連の書籍、またはインターネット上の情報を探すと「転院」「セカンドオピニオン」という単語がうじゃうじゃと出てきます。また、会社の同僚でやはり精神疾患を抱えてしまった人に質問してみたところ、やはり医者と馬が合わず転院を繰り返しているそうです。

筆者もこれまでに三つの精神科への通院を経験しています。一つ目の病院では、先生に「自分は何の病気なのでしょうか?」「今飲んでいる薬は何なのでしょうか?」という質問をしても、まともに答えてくれませんでした。家族や親戚の高い口コミで通院を始めた知る人ぞ知る病院だったらしいのですが、曖昧な回答に不信をいただいたこと、通院に片道1時間以上かかること、保険適用外のために毎月高額な医療費がかかることなどの理由が重なり、結局転院することにしました。

糖尿病やがんなど身体的な病気で、このように医者に不信を抱いて転院を繰り返すというケースは、あるのかも知れませんがあまり聞いたことはありません。統計が存在するわけではありませんので断言はできませんが、やはり精神疾患の方が転院を繰り返すことが多いのではないかと思います。

 なぜ転院を繰り返すことになるのか

人それぞれ、いろいろなケースがあると思います。よく見かける理由としては「医者が話を聞いてくれない」「医者の言動が気に食わない」「医者の言うことを聞いているのに全然良くならない」などでしょうか。筆者個人の体験を踏まえた結論としては

 

「医者はカウンセラーではない(場合が多い)にも関わらず、患者は医者に対してカウンセリング(的なもの)を期待している」

 

というミスマッチが起きていることが、原因の一つとして挙げられるのではないかと思っています。要約すると「患者は精神疾患を治す為に必要な指導の一切を医者に求めることがあるが、医者は全ての要望に応えられない」ということです。今回は、この推測が正しいと仮定した上でのブログとなります。

医者とは

医者(医師)の定義は、医師法の第一条に次のように定められています。

 

医師は、医療及び保健指導を掌ることによつて公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。

 

「医療」および「保健指導」をすることが医者の務めだと法律で決まっているのです。したがって、精神疾患を抱えた患者が医者に対してカウンセリング、またはそれに近い何らかの指導を仰ぐことは問題ないように思えます。しかし、保健指導とは

 

医師・保健師・看護師・栄養士などの医療者が、生活習慣病などの病気の予防や健康維持・増進を目的として、運動・食事のほか睡眠・飲酒・喫煙などの生活習慣について改善の助言を行うこと

  

とされています。医者が行ってくれる保健指導は生活習慣に限られているのです。一方で、カウンセリングの定義は以下の通りです。

 

依頼者の抱える問題・悩みなどに対し、専門的な知識や技術を用いて行われる相談援助のこと

  

カウンセリングは特に相談内容に縛りがなく、保健指導の範疇を超えている場合が多いわけですね。

このような保健指導とカウンセリングのミスマッチは、医療法が施行された昭和23年には今ほど多くの精神疾患の患者が存在せず、基本的に内科および外科といった身体的な病気に対して有効な生活習慣への助言のみを保健指導として定義してしまい、その法律が今もそのまま残っていることが原因ではないかと推測されます。

そして近代社会になって精神疾患の患者が急激に増加し、また精神疾患の患者に対しては生活習慣以上に心理面で様々な援助が必要なことがわかってきたため、医者とは別にカウンセラーという仕事が脚光を浴びてきたのではないでしょうか。

カウンセラーとは

それでは、カウンセラーとはどういう方のことを指すのでしょうか?一般的に、カウンセラーとは、カウンセリングを行うための資質や技量を備えていることを証明するための試験や資格に合格した方のことです。

その資格は「ユング派分析家国際資格」という大半の人が聞いたことのないと思られる超難関(面接が英語なのだそうです)の国際資格から「臨床心理士」という、こちらは恐らく大半の方が一度は耳にしたことがあるものまで、実は様々な種類が存在します。

医者はカウンセラーではない(ことが多い)

ここまでの話で大体の読者の方は察しがついていると思いますが、精神科の医者の方々は医師免許は持っていますが、カウンセラーとしての資格も同時に持っていることは稀です。

筆者は以前、医療費控除の確定申告をするにあたって税務署に確認したことがあるのですが、「医師免許を持っていないカウンセラーが行ったカウンセリング費用は医療費として認められない」と回答されたことがあります(自治体によってどう扱われるかは異なるようですが)。

このような事実から導き出される結論は、医者とカウンセラーは全くの別物だということです。患者が生活習慣の範疇を超えた保健指導を医者に求めても医者はそれに応えられないし、そもそもそれは医療行為(=保健指導)ではないということです。

「医者が話を聞いてくれない」と普段からよく不満を抱かれている方については、よく自分の相談内容を思い返してみて下さい。ご自分の相談内容が、生活習慣の範疇を超えた心の悩み(例えば人間関係がうまくいかないとか)ばかりになっていないでしょうか?残酷な表現であることを承知で書きますが、カウンセラーとしての資格を持たない医者にとって、患者の心の悩みを聞くことは必須ではなく、また治療の対象でもないということなのです。

もちろん、治療に多大な支障をきたすほど患者の相談内容が深刻な場合は、医者もある程度話を聞いてくれるとは思います。しかしそれは、彼らの専門分野ではないのです。筆者は恥ずかしながらこの事実に気づくまでの間、なぜ精神科の医者なのに親身になって話を聞いてくれないのか、とイライラしたことが何度もありました。

面倒でも心の相談はカウンセラーに

もしあなた、またはあなたの身近な人が精神疾患で苦しみ、心の悩みを抱えているようであれば、カウンセラーを受診することをお勧めします。精神科の医者は、薬を処方し、生活習慣については指導してくれますが、心の悩みは聞いてくれません。

筆者は適応障害双極性障害II型の他にパーソナリティ障害を抱えており、非常に生きづらさを感じていましたが、カウンセリングに行くことで徐々に心の苦しみから解放されつつあることを実感できています。医者はあくまで薬を処方し、生活習慣についてアドバイスをしてくれる人であって、それ以上の相談に乗ってくれる人ではないと割り切り、心の悩みはカウンセラーに相談しましょう。

本来であれば、医者の方から『心の悩みについては私には相談に乗ってあげることができないが、信頼できるカウンセラーを紹介することはできるので、よかったらそちらで一度話をしてみてはどうでしょうか』といったように、カウンセラーとの協力体制を築き、患者にカウンセリングを促すべきではないかとも思いますが。

補足

今回は、精神疾患の患者が転院を繰り返す理由として

 

「医者はカウンセラーではない(場合が多い)にも関わらず、患者は医者に対してカウンセリング(的なもの)を期待している」

 

という前提の元にその原因と対処法について論じましたが、もちろんそれ以外の理由で医者が信用できないというケースもあるでしょう。例えば医者の言うことをきちんと聞いて、薬も毎日服用しているのに一向に良くならないケースなどです。

このような場合は、医者の診断や治療方針が間違っているという可能性も否定できませんので、自分が納得できるまで、あるいは相談の余地がなくなるまで、その医者と議論をするべきだと思います。その上で、こちらが納得できる回答をしてもらえなかったり、そもそも話を聞いてくれなかったりした場合は、別の医者にセカンドオピニオンを仰いだり、転院するといった対策も視野に入れるべきでしょう。