精神疾患について考察するブログ

自分が患っている精神疾患を中心に、それらの疾患や患者とどうやって向き合っていけば良いかを考察します

うつとセロトニン

うつに限らず、抑うつ状態の患者の脳内ではセロトニンが不足しているといわれており、それが抑うつ状態を引き起こす大きな原因だと考えられています。抗うつ剤には選択式セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)など、セロトニンに作用する薬が多いのもそのためです。ところでセロトニンとはいったい何者なのでしょうか?

セロトニンとは

セロトニンは主に生体リズム・神経内分泌・睡眠・体温調節などをつかさどる神経物質です。セロトニンは腸に約90%、血液中に約5%、脳に約5%存在するといわれています。セロトニンは、アミノ酸の一種であるトリプトファンという栄養素を摂取することで、体内で合成される物質です。 

セロトニンの効果

セロトニンは存在している場所によって作用が異なります。腸に存在するセロトニンは、主に消化管の働きに作用し腸の内容物を肛門まで運ぶ蠕動(ぜんどう)運動を促します。血液中に存在するセロトニンは、血管を収縮させて、止血する作用があります。そして一番気になる脳に存在するセロトニンですが、セロトニンは脳内において実に様々な効果を発揮します。

  • 覚醒作用
    セロトニンは血圧、呼吸、心拍等を活動的にする効果があるので、目覚めがすっきりします。
  • 精神を落ち着かせる
    セロトニンは脳内において、意欲をつかさどる神経物質であるドーパミン、ストレスホルモンであるノルアドレナリンをコントロールし、精神を安定させる働きがあります。
  • 姿勢が良くなる
    セロトニンは運動神経を刺激するため、首筋や背骨の周囲、下肢の筋肉、まぶたや顔の筋肉などが刺激され、姿勢が良くなります。また、表情も生き生きとしてきます。
  • 痛みを和らげる
    セロトニンは痛みの伝達を抑制する働きがあるので、脳内でセロトニンが分泌されている間は痛みが緩和されます。

セロトニンと睡眠

日中に分泌されたセロトニンは、日が沈むとメラトニンという神経物質に変化します。メラトニンは別名「睡眠ホルモン」とも呼ばれ、入眠を促す作用があります。そのため日中のセロトニン分泌量が十分でない場合、メラトニンの生成量も減少し、夜の寝つきが悪くなります。

また、メラトニンはテレビ、パソコン、スマートフォンなどの画面から発せられるブルーライトによって減少することが知られています。そのため、寝る直前までこれらのデバイスを見ていると寝つきが悪くなる恐れがあります。さらに、スマホなどから発せられる電磁波もメラトニンを分解してしまうと言われているため、寝る2~3時間前からはこういったデバイス自体を使用しないようにした方が良いでしょう。

筆者の場合、21時頃になったらパソコンやスマートフォンは使わないようにして風呂に入り、その後は部屋の電気は過剰に付けないようにして、本を読んだり紙で書き物をしたりしています。 

No.7 良い睡眠を取るために必要不可欠なホルモン メラトニンとセロトニンを上手に分泌させて良い睡眠を | Sleepdays inc.Sleepdays inc. 

体温が下がることによっても睡眠は促されますので、寝る1~2時間前に41℃以下のぬるま湯で半身浴をすることも入眠を助けます。筆者も夏以外は毎日半身浴をするようにしています。 

セロトニンの増やし方

上述したように、セロトニン抑うつ状態において顕著にみられる症状である「気分の障害」と「睡眠」に直接関わる重要な神経物質です。しかし長期間、過度なストレスに晒された脳内ではセロトニンの分泌が弱っていると言われており、これが抑うつ状態の大きな原因の一つとなっています。脳内のセロトニンの分泌量を増やすのに良いとされているのは以下のような行動です。

セロトニンの原料となる栄養素を摂取する

上述した通り、セロトニンの主な原料となるのはアミノ酸の一種であるトリプトファンです。トリプトファンは以下のような食材に多く含まれています。

トリプトファンを多く含む食品

鰹節、胡麻、魚介類、肉類、乳製品、卵、大豆、ナッツ類

快眠生活の源。「トリプトファン」の効果的ないただき方! | 世界睡眠会議 

体内に摂取されたトリプトファンは、ビタミンB6および炭水化物と合成されて、セロトニンとなります。したがって、ビタミンB6と炭水化物を一緒に摂取するのも重要になります。ビタミンB6および炭水化物を多く含む食品は以下の通りです。

■ビタミンB6を多く含む食品

鶏肉、レバー、バナナなど

■炭水化物

ごはん、パン、果物など 

いずれの栄養素も、取り立てて特別な食材に含まれているわけではありませんね。すなわち朝起きたらしっかりと朝食を食べる、ということが一番重要なことなのです。

1人暮らしや酷い抑うつ状態で朝食もままならないという方にはバナナがお勧めです。バナナにもトリプトファンは含まれていますので、バナナ1つで上記に挙げた3つの栄養素をすべて摂取することができます(※1)。

 

※1:2018/7/5 コメントを受けて追記
バナナ100gに含まれるトリプトファンの量は約10mgであり、肉類、魚類、ナッツ類と比べると1/10以下です。したがって、朝食を食べる習慣付けのとっかかりとしてはバナナは非常にお勧めですが、慣れてきたらよりトリプトファンの含有量が多い食品と一緒に摂取したり、可能であればごはんやパンとおかずと言ったよりしっかりした朝食を食べるようにシフトチェンジしていったりするとよいでしょう。筆者の場合、バナナ、ブルーベリーとチアシードを入れたヨーグルト、そして素焼きナッツ(アーモンド、くるみ)を朝食として食べています。特に調理の必要がないので手軽に摂取できますよ。

 

ここで注意したいのは、セロトニンそのものを摂取しても、脳内のセロトニンは増えないことです。脳の入り口には血液脳関門という関所のようなものがあり、脳内に危険な化学物質やウイルス等が入り込まないようになっています。トリプトファンはこの血液脳関門を通過できますが、腸で生成または吸収されたセロトニン血液脳関門を通過できないため、直接セロトニンサプリメントなどで摂取しても脳には届かないということです。また、多量のセロトニンは下痢の原因にもなり、腸内環境の悪化は抑うつ状態の悪化に繋がりますので、サプリメントで直接セロトニンを摂取することは避けましょう。

太陽の光を浴びる

セロトニンは、トリプトファンなどの栄養素を取るだけでは必要な量が分泌されません。朝起きて、太陽の光を網膜で感じることによりセロトニン神経が刺激され、セロトニンの分泌が活性化します。

セロトニン神経を刺激するためには2500~3000ルクスという、照明器具では足りない明るさの光が必要になるため、朝起きたらまずカーテンを開けてしっかりと太陽の光を浴びましょう。窓の大きい部屋であれば、カーテンを開け、窓際で外を見ながら朝食を取るだけでも十分でしょう。

リズム運動

「リズム運動」とは、同じ動きを繰り返し行う運動で、これもセロトニン神経を刺激する効果があります。ウォーキング、サイクリング、カラオケ、腹式呼吸などが挙げられますが、食事をよく噛むこともリズム運動に成り得ます。

一つ注意すべきことは、これらの運動はある程度の時間(5分~30分程度)継続しないと効果がないことと、疲れを感じるほど実施すると今度はかえってセロトニンの分泌量が減ってしまうことです。

筆者の場合、毎日の散歩をリズム運動の軸に据えて生活をしていますが、調子が良い時は少し早歩きで歩幅も大きめに、逆に調子が悪かったり疲れが残っている時はゆっくりと歩幅も小さめにあるくことを心掛けています。

グルーミング

グルーミングとはいわゆるスキンシップのことです。信頼できる人やペットとスキンシップをすることで、安心や幸せを感じるオキシトシンという神経物質が分泌されます。オキシトシンにはセロトニンの分泌を誘発する働きがあるため、間接的にセロトニンの分泌量を増やすことができます。

家族や配偶者がいる方は、肩揉みなどをしてもらうだけでも良いでしょう。ペットを撫でてあげるのも効果が高いようです。

筆者の場合、残念ながら誰かに気軽にスキンシップをしてもらえる環境にありません。しかし、オキシトシンは家族や友人と面と向かって会話をするだけでも分泌されるようです(メールやLineなど文字だけのやり取りだけではダメのようです)。ですので、病院に行くついでなどで、家族や友人と会えるチャンスがあるときにはなるべく会いに行くようにしています(ただし疲れを残さない範囲で!)。

笑う

セロトニンは別名「幸福ホルモン」とも呼ばれ、好きなことや楽しいことをしていると分泌されます。また、そのような楽しい気分自体を作ってくれます。抑うつ状態の時に笑うというのはかなり難しいことですが、筆者の場合、少しくらいの落ち込みだったらYouTubeニコニコ動画などで笑える動画を探して無理やり笑うことにしています。それを見ている間は調子を崩す原因となったトラブルのことも忘れられるので、一石二鳥です。最近ハマっているのは「ボケて」というサイトです。

bokete.jp

誰かが投稿した写真や画像に対して、別の誰かがボケを入れるというだけのシンプルなサイトですが、たまに非常にうまいボケがあって面白いです(投稿される画像などについては、著作権等でいろいろと問題があり、物議をかもしているサイトではありますが・・・)。

まとめ

今回紹介したセロトニンは、抑うつ状態に直接関わる重要な神経物質です。一度セロトニンの分泌が弱まってしまうと、それが正常に戻るまでには3か月はかかるとも言われています。また、仮に正常に戻っても、過剰なストレスに晒されることでまた分泌が弱くなってしまいます。

もし、今回紹介したセロトニンの分泌量を高めるための数々の施策を行おうと考えていただけた方については、是非、継続して行って欲しいと思います。

セロトニンについては有田秀穂という方が研究の第一人者で、「セロトニンDojo」というサイトも運営されているようなので、もしより深く知りたいという方は、一度参照されると良いと思います。

セロトニンDojo 公式サイト

 

■参考文献

fuminners.jp